ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと
- 作者: 斉藤徹
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/11/11
- メディア: 単行本
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厚めの書籍ですが事例紹介中心かつ読みやすい文章で、意外とサラリと読めてしまいました。
ソーシャルメディアの隆盛が生活者の考え方や行動をどのように変えていくのか。
そして、そのような時代における企業経営の勘所を具体的なレベルに落とし込んで解説してくれてます。
あ、企業経営というよりは企業内個人が抑えておくべきポイント、って感じでしょうか。
日本の大企業に染まりきった方だと、対岸の何とやら的な理解しかできないかもしれないけど、ソーシャルシフトを肌で感じている人(若手に限らず)が、所属する組織を変えていくための動機付けからサポートしてるような、そんな啓蒙的な匂いも少し。
それにしても、さすがに本質を突いてるなぁと思うのは、ソーシャルシフトに流されているというか泳がされている(私のような)人間には見えない部分に言及されているあたりです。
なんというか、ソーシャルメディアありきじゃなくて、それは人類の進化における歴史的な必然(だから別に流行ってるだけじゃないんだよ)、というニュアンスは確かにそうだなぁ、と。
たしかにまぁ、デバイスや通信N/Wの問題だけじゃなく、バブルな頃にFacebookあっても何だかねぇ。
というわけで、ソーシャルメディアとか使ってない方にこそ読んだら面白いかもしれません。あと色んなマーケティング理論のエッセンスを繋ぎ合わせてくれてるという見方も出来るので、ここから気になる論点を見つけて掘り下げているという勉強の仕方もありかも。というか勉強したい。
メモ:
- P.27 今やマーケターにとって、生活者は分析のターゲットでは無い。一人ひとりが心を持ち、終わりなき旅をともにする、大切なパートナーとなったのだ。
- P.70 政府や企業が好むと好まざるとにかかわらず、ソーシャルメディアは世界をさらに透明に変えていき、パワーの主体が生活者に移行していくだろう。少し前まで、ネットの口コミと言えば2ちゃんねるが全盛だった。企業は彼らの会話を「監視」し、誹謗中傷などブランドイメージを毀損する書き込みの早期発見に躍起になっていた。ソーシャルメディアの時代、責任ある生活者の発言は、企業にとって「傾聴」すべき対象となった。監視的、分析的に取り組むのでは無く、一件一件に目を通し、そこに含まれるエッセンスを経営に生かす。そんな時代が訪れた。それは顧客や社員などあらゆる生活者接点で起き始めた、突然で不連続的なパラダイムシフトなのだ。
- P.90 「100万人に向けた大声で叫ぶメッセージ」は生活者にスルーされて伝わらなくなった。ソーシャルメディア時代は「100人の人にしっかりファンになってもらえるコミュニケーション」が大切で、そこからそれぞれ100人の友人に伝わり、さらに次の100人に伝播していく。
- P.162 ソーシャルメディアでは、そんなサイレントマジョリティの方の声を聞くことが出来る点に価値があります。そんな何気ない声は、既存の顧客接点では知ることができなかったと思います。
- P.163 毎日数千件のソフトバンクに関するつぶやきのうち、配布する価値があると思われる数百件を抽出し、ひとつのメーリングリストで配布している。
- P.198 丸亀製麺でも、中略、運用チームのメンバーは毎日の店舗売り上げなどをチェックし、前日の時間帯別や、うどんやトッピングは何が売れているかを見ながら、強化すべき商品を考えてFacebookやTwitterの投稿をしているのだ。
- P.256 ソーシャルメディアを活用している企業には共通の特徴がある。本質的な顧客志向を持ち、挑戦を重んじる社風が根付いているという点だ。逆に言うと、一般的な企業は「顧客より社内規律」を重んじ「チャレンジよりリスク回避」を重んじる傾向が強い。そのために、諸刃の剣となるソーシャルメディア活用を躊躇しているケースが多いように感じられる。
- P.336 ヒト、モノ、カネ、情報。企業パワーの源泉である経営資源が、今や、アイディアや共感で集められる時代になってきた。企業が企業として生き残るためには、今までとは全く異なる求心力が必要になるだろう。それは権限や統制ではなく、貢献、信頼、尊敬、評判だ。
- P.348 ソーシャルシフトの必要性が広く伝わり、硬直化した日本の組織に風穴を空けたい。それこそ、長く国内経済を覆っている閉塞感を一掃するカンフル剤になりうるように思うからだ。そんな想いで、本書を書かせて頂いた。現場からトップまでがひとつの想いでつながり、社員が幸せになり、生活者に幸せが広がる。正解もよりよくなっていく。僕たちの前には明るい未来が広がっている。