グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

  • 作者: スティーブン・レヴィ,仲達志,池村千秋
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2011/12/16
  • メディア: 単行本
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一般意志2.0を紐解きながら考えてしまうのは、ルソー/フロイトはやむを得ないとして、Googleの存在についてはあんまりいい加減な解釈のまま前に進めるのは勿体ないというか不自然な気がするんだよなぁ、といったあたり。


目に見える範囲でGoogleが提供しているサービスなんてのは氷山の一角どころではないでしょうし、既にそれなりの歴史も経ている企業であるからこそ生い立ちとか成長プロセス、そこにおける様々な想いの交錯なんかを感じ取るにはどうしたらよいものか、と思っていたところで偶然本書に遭遇しました。


唯一、インサイダーとして自由に取材することを許可されたのが、かのスティーブン・レヴィさんな訳ですが、黎明期からFacebook以後まで漏れなくまとめられています。ひろく、そして深く。数百人を超えるグーグラーへの取材を繋ぎ合わせて網羅性と深度を両立した結果が、そのまま本の分厚さに表れているんですねw、いかにも渾身の一冊。


トピック的には、創業者とモンテッソーリ教育みたいな変わったネタから、検索エンジン黎明期、エリック・シュミットさんを迎え入れるところ、アドワーズアドセンス、独特の採用プロセス、IPO、自前サーバに自前データセンタ、Youtube、対MS、GoogleEarth、ストリートビュー、政治活動、などなど本当に漏れなく取り扱われてます。ほんとお腹いっぱいです。


よく理解できたのは何でGoogleという企業が成り立つのか、といった部分。想像を絶する強烈なビジョン、徹底的にこだわった人材確保、安定した懐事情、徐々に実装されるフレキシビリティ、等々。一方で、私が知っているGoogleなんて、ほんの一部でしかないというのも痛感しました。


Gmailから何から、毎日ほんとにGoogleさんにはお世話になってますが、そこまで凄い組織だという認識は正直なかったです、反省。検索だけじゃもったいない。グーグルの色んなサービスを味見しつつ、その目指すところを肌で感じて行かないといけませんね。




以下、メモ。

  • P.15 「製品化へのロードマップについてはわかりました。でも、収益化へのロードマップはどうなっているのですか?」メイヤーの答えはけんもほろろだった。「そういう考え方をしてはいけない」と彼女は言った。「私たちは、ユーザーのことだけを考えればいいんです。ユーザーが満足してくれれば、収益は後からついてくるものです。」
    • んー、自分も強がってそういう発言をすることはありますw、彼らと違うのは、それが許容されるための充分な収益化が行われている、という点につきますね。まぁ、きっと時間の問題でw


  • P.18 私が目撃したのは、常に期待通りの成果を出せなくても、創造的な秩序の破壊を楽しんでいる企業の姿だ。2人の創業者の目標は最初から、人工知能を使って人間の能力を拡張することであり、グーグルをそのための手段と考えていた。その夢の実現のために、巨大な企業を築く必要があったのだ。と同時に、なるべく小回りがきき、権威に否定的で、誰の指図も受ける必要の無い新興企業の気ままさを維持しようとした。
    • 壊れることを前提としたお手製のサーバなんかもある意味そうかもしれませんが、ちゃんと必要な失敗を織り込んだプランニングは素晴らしいですね。ちゃんと失敗しないと、絶対に成功も出てこないでしょうし。


  • P.57 結局グーグルを大金で買収しようという人間は現れなかったので、ペイジとブリンには他の選択肢はなかった。ペイジは自分のアイデアで世界を変えるという夢をついに実現できるかもしれないと考えた。「会社が行き詰まっても、それはそれで仕方がないと思った」とペイジは言う。「世の中にとって本当に重要なことをするチャンスだったのだから」
    • 世の中にとって本当に重要なこと、って何だろう?


  • P.181 「エンジニアリングとコンピュータ科学によって世界に大きな変化をもたらしたいと、ラリーとサーゲイは考えている」とCFOのパトリック・ピシェットは語る。「四半期ごとの財務状況を見て自分の頭に銃を突きつけたくなるような思いをしなくても、それをする自由があるというのは素晴らしい贅沢だ」グーグルの広告商品は、大胆な新機軸が失敗しても大怪我をしないように保証する安全ネットとなった。


  • P.212 ファレルの役割はその人物に創造性があり、技術的または戦略的な問題について自分の立場を弁護できるだけのずぶとさを持ち合わせているかどうかを判断することだった。


  • P.239 案の定、社員は株価が上昇すると幸せで楽観的な気分になったが、革新的なアイデアには慎重な態度を示すようになった。つまり、グーグラーたちは裕福になるにつれて保守化していったのだ。これこそまさに、創業者達が恐れたIPOの弊害だった


  • P.257 「ラリーがアシスタント達を追い出した理由は、自分とミーティングを持つ方法さえわからないような無能な連中と会いたくなかったからだ」とプロダクトマネージャーの陳天浩は言う。


  • P.280 これは象徴的なエピソードだ。ゲイツは言葉にこそしなかったが、個別のメールを保存するグーグルのやり方には無駄が多すぎると暗に批判したのだ。最先端の技術情報に精通しているにもかかわらず、彼の発想は明らかに、ストレージ資源はなるべく節約して使う必要があるという旧来のパラダイムに縛られたままだった。何しろゲイツが始めてプログラムを書いたのは、簡潔さを確保するのが至上命題だった時代のことだ。
    • 自分が縛られている旧来のパラダイムってなんだろう?


  • P.324 今やウェブはブラウザを通じて閲覧できる情報を掲載するだけでなく、アプリケーションを実行するプラットフォームとして機能することを期待されていた。ガタが来ている旧式のブラウザではこうした新しい現実に対応するのはなかなか難しかった。中略。グーグルは独自ブラウザを開発することでしかクラウド時代のブラウザを実現することはできない。それ自体が受け入れられることがなくても、既存のブラウザに危機感を持たせて、より急進的なアプローチを受け入れさせることが出来るかもしれない。


  • P.464 中国におけるグーグルの実験はほとんど実を結ばないだろうと、陳は思っていた。「何を検索結果から削除すべきかについて、中国の情報省から毎日のように指図があり、それをおとなしく拝聴しなくてはならない。中国のトップクラスの人材を採用したはいいが、リーダーシップの問題と、政府の恣意的な判断に振り回される無法状態に足を引っ張られて、円滑に仕事をすることが非常に難しい。」


  • P.491 ハッカー達は最初にグーグルのセキュリティを破る上で利用しやすそうな人物を選び出したようだ。ターゲットに選んだ人たちを徹底的に監視し、フェイスブックやツイッターでの行動をチェックして情報を集めた。そのうえで、ニセの写真公開サイトをつくり、友人を装って、そのサイトへのリンクを標的に送信。その人物がリンクを開いた瞬間、罠が作動した。コンピュータに悪質なソフトウェアが埋め込まれて、コンピュータがハッカーたちに乗っ取られたのだ。
    • SNSのまさにソーシャルな脆弱性って、あんまり考えないようにしてきてますが、確かに怖い。


  • P.497 20年や30年という長期の時間軸で考えれば、中国は明らかに自由化に向けて動いていると、李は考えている。グーグルの撤退に結びついた一連の出来事は、そのなかの一時的なブレに過ぎないという。「2年もたたないうちに、(中国の指導部で)新しい世代が実権を握る」と、李は言う。「次の世代は、もっと若く、進歩的で、アメリカを知る人が多く、金融機関など産業界の経験がある人も多い。今の指導部よりオープンな傾向を示すはずだ。」


  • P.519 たとえ事実を示しても人々を説得できるとは限らないとわかった。10年前、ラリー・ペイジは、人々が簡単に真実を知るための手立てを得れば、世界がもっとよくなると考えた。グーグルはその手立てを提供したが、世界はほとんど変わっていないように見えた


  • P.542 プロジェクトを進めるときも、早い段階で不安材料ばかりを考えるべきでないと、ジョーンズは思っていた。数々の不安材料が好材料を覆い隠してしまい、プロジェクトそのものを見送るべきだという結論を下しがちになるからだ。


  • P.572 ペイジにとって重要なことは、プロジェクトが世界の役に立つのかという一点だった。ブックサーチのもたらす恩恵は法技術上の些細な問題点より遙かに大きいと、ペイジには思えた。「原則参加方式が気にくわないというだけの理由で、書籍に記された人類の英知に人々が触れる道を本当に閉ざしたいのか?この問題は社会全体の利益という観点で考えるべきだ」と問いかけた。この考え方を受け入れない人が大勢いることがショックだった。


  • P.582 客観的な事実に異を唱えることは、誰にも出来ない。自分勝手な思い込みを真実だと言い張る権利は、誰にもない。そう考えていた。これがグーグルプレックスを支配していた発想だったし、それはこの先も変わらないだろう。しかし、グーグルが学習し始始めためたように(中略)、何百万台ものグーグルのサーバーの外のリアルな世界では、データと論理だけで勝利を手にできるとは限らないのだ。


  • P.594 SNSは基本的に友人からの個人的な推薦やアドバイスの方が、全人類の英知とそれを代表するグーグルの検索エンジンより価値の高い情報を提供するという前提に基づいている。それはグーグルでは全く受け入れられない考え方だった。そもそもペイジとブリンはアルゴリズムこそが唯一の正しい答えを提供するという前提に基づいてグーグルを立ち上げたのだから。グーグルの考えが間違っていることを示す証拠は、よりによって身内からもたらされた。「結婚6周年記念 プレゼント アイデア」
    • なるほど!これは使いやすい例え話ですね。


  • P.596 「速く行きたいなら、1人で行けばいい。でも遠くへ行きたいなら、みんなで行こう」「構え、撃て、狙え」
    • !!!