電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2010/04/15
- メディア: 新書
- 購入: 38人 クリック: 1,111回
- この商品を含むブログ (223件) を見る
こんなタイトルなので、電子書籍版を購入してみました。iPhoneとPC、どっちでも読めるようになってまして、本を開けないほどの満員電車の中であっても、iPhone上であれば何とか読めるもんですね。でも、iPhone版とはいえ、最低限しおり機能がないと厳しい。
ページをめくる、めくったページが戻らないように抑える、といった紙の本を読む際の当たり前の動作がなくなることの意味を確かめるには、もう少しいろいろ読んでみる必要があるだろうけど、電子書籍への抗いようのない流れを痛感する一冊。
最近では珍しく、タイトル通りの内容であることにびっくり。この本を読んで、本の読み方というか扱い方は変わりますよ、もう絶対みんな読んだ方がよいと思う。
考えたら青空文庫のころから電子書籍だし、iTMSだって何年も前から使ってるけど、その存在というか出現が歴史的に意味するところなんて、ほとんど考えてなかった。読める人はここまで深い洞察ができるものかと感心しつつ、己の浅はかさを悲しむばかりです。
本が電子化されると何が起きるのか、音楽の世界の推移と比較しながら非常に分かりやすく解説。
いいとこだけをあげると、
・通常の本より読みやすくなる。
・可搬性が高まる。
・安く買える。
・費用面に限らず出版しやすくなる。
・検索性が高まる。
・マイクロコンテンツ化とかアンビエント化。
・流通プラットフォームの健全化。
・ソーシャルメディアによる多様なコンテクスト形成のされやすさ。
みたいな感じ?
確かに、海外旅行へ行く時に一番困るのは持っていく本の選別な気がする。iPadまでのつなぎでキンドル欲しいなぁ。
以下、気になったところメモ。
- ぞくぞくするほど刺激的な未来
- ISBNって、誰でもとれるんだ!
- これからのジャーナリストに必要なスキル
- 的確なタイミングで的確な内容のコンテンツを的確なスキルを駆使し、多様なメディアから情報を発信する能力
- 多くのファンたちと会話を交わし、そのコミュニティを運用できる能力
- 自分の専門分野の中から優良なコンテンツを探してきて、他の人にも分け与えることのできる選択眼
- リンクでお互いがつながっているウェブの世界の中で自分の声で情報を発信し、参加できる力
- 一緒に仕事をしている仲間たちや他の専門家、そして自分のコンテンツを愛してくれるファンたちと協調していく能力
- ケータイ小説はコンテンツではなくて、コンテキスト
- 日常の会話や情景など、圧倒的なディテールのリアリティが魅力
- ケータイ小説家たちは、いかにして自分の体験が読者たちにつながるかを目指しているのであって、すばらしい表現や新しい世界観を切り開こうとしている純文学を目指す人とはそこが決定的に違う
- 言い換えれば、ケータイ小説というのは従来のいわゆる文学、小説といったコンテンツとは異なって、読者と書き手の双方をくるんだ共有空間のようなものを生み出すためのシステム
- 日本の特殊な本の流通システムのメリット
- 大量流通によって流通コストが下がって、単行本が1500円前後と安い価格で買えるようになった。アメリカではハードカバーが2600円前後もするのと比べれば、そのメリットは大きい
- 雑誌と書籍を同じ店で扱うことで、書店という場所の敷居が低くなった。日本では街の書店は大衆的でなじみやすい存在になった。
- こうしたことによって、「高い本を読む知識人」と「本を読まない一般大衆」というように文化が二極化しないで、知と一般大衆が本を媒介にしてつながることができた
- 壮大なる自転車操業と本の「ニセ金化」
- 取次に委託した分すべての金額をいったん取次から受け取れる(!)
- 返本分は取次に返金しないといけないが、別の本の委託で相殺+αにしてしまう
- 出版社は返本分の返金を相殺するためだけに、本を紙幣代わりにしてすりまくるという悪循環に陥っていく
- このあたりが、本が売れないのに点数だけは増えていくことの背景にあるロジック
- 出版不況は、活字離れやインターネットだけが原因ではない、という話にもなる
- 安藤哲也語録
- 書棚は管理するものではなく、編集するものだ
- 文脈のある本棚づくり
- 本の無党派層をどう惹きつけるか
- これらの取り組みが広まらない理由を、維持が大変とか面倒としているが、それこそ自動化できないもんだろうか。
- 共同体空間へのI/Fもしくはその一部としての電子ブック
- それはすでに従来の「読書」という概念を超えた新しい枠組みであり、本がメタ化され、メタ化された総体としての本とその周辺の文化が、新しい概念として生まれてくることになるでしょう。これは新しい文化の幕開けになると思います。