「応援したくなる企業」の時代 マーケティングが通じなくなった生活者とどうつき合うか (アスキー新書)


取引や購買の有無とは関係のないところで、確かに「応援したくなる企業」は存在していると思う。大切なのは中にいる自分達が応援したくなることですよね。


タイトルもサブタイトルも冴え渡ってる本書は、マーケティングの大前提というか企業とかビジネスが社会において果たすべき役割が変わってきている、にも関わらず私たちの「売り方」が従前の価値観に縛られたものであるという点を明解に解き示します。


例えば、下記のような感じ。


・「ターゲットにモノを売る」というまちがい
  →ターゲット発想からコミュニティ発想へ


・「差別化のポイントはどこ?」という不見識
  →シェアアプローチから新市場創造アプローチへ


・「ニーズはなんだ?」と問うあやまち
  →ベネフィット訴求型からスピリッツ共感型へ


・「勘でものをいうな」がもたらす損失
  →論理/言語重視から文脈/非言語重視へ


・「どんなアウトプットが得られるんだ?」と問う不利益
  →ソリッドプロセスからフレキシブルプロセスへ


・「下から意見が出ない」という勘ちがい
  →管理型組織から共創型組織へ


・「仕事にプライベートを持ち込むな」という非常識
  →公私分離から公私混同へ





非常に分かりやすく書かれていて、「売れていない」という現実を抱えているものにとっては耳障りが良すぎるのがちょっと困る。


今まで通りやってても駄目なのは良く分かるんだけど、そこで思考停止に陥る事無く、だから何をどうして行くのか、日々積み重ねて行きたい。いいとこまで来てるとは思うのですが、これは終わりの無い道のりであることもまた疑う余地がない。


実態が伴ってるかどうかはともかく、「わたしたちは応援してもらえる企業を目指してます」という匂いを付けていくだけでも、たぶんそこそこの効果はあるんだろうなぁ。とかね。


メモ:

  • P.89 新市場の創造には確かにリスクを伴う。しかし、同質化しつつある既存市場にしがみつづけるのも、また同じように大きなリスクがある。差異の小さな差別化競争をくりひろげているところに、他社から市場創造型アプローチによる新たな価値が持ち込まれると、生活者の関心は一気にそこに向かう。そうなると、差別化競争を繰り広げていた企業は、のきなみ危機的な状態に陥ってしまいかねないのだ。


  • P.105 「絶対アプローチ」では、リファレンスポイントは自社の外ではなく、内側に設定されている。「こうあるべきだ」「こうなりたい」「これを達成したい」という自己目標=ビジョンを設定し、その基準と照らし合わせて、そこに到達する為に必要な行動をとるのだ。そのため、リファレンスポイントは現在ではなく、未来に設定される事がおおい。将来こうなるべきだから、いまはこうすべきだ、という発想だ。


  • P.111 新たな市場を切り開き、生活者にこれまでに無い付加価値を提供する事で支持を得ている企業には、手段としてではなく、いわば根底の部分に明確で揺るぎのないビジョンがある。それを商品やサービスに反映していこうとする意志がスピリッツであり、生活者は実際に形にしていく過程をも含めて共感するため、深いコミットメントが生まれるのだ。


  • P.153 これまでのビジネスプロジェクトの多くは、「事前に下調べをして綿密な計画を立てておく」ようなアプローチで進められてきた。中略。しかし、つくるべきものがはっきりしている際のプロジェクトプロセスと、モノやサービスを考えながら、これから生み出して行こうとする際のプロジェクトプロセスは、かならずしも一致しない。中略。生活者が「何が欲しいのか」を自覚できていない状況では、同じアプローチは通用しない。中略。アウトプットがあらかじめ明言できるようなアプローチでは、イノベーションが起こせない事も、いま直面している問題にそもそも適切に取り組む事すらできない可能性がある事にも、残念ながら気付いていないケースが多いのである。


  • P.200 これからの時代、社員に好かれる企業である事は、なによりも大切な事だと私は考える。そもそも内部の社員に好かれない企業が、外部の生活者に好かれるはずがないのだ。