緒方貞子−難民支援の現場から

緒方貞子 ―難民支援の現場から (集英社新書)

緒方貞子 ―難民支援の現場から (集英社新書)


えぇと、先日世界級キャリアのつくり方―20代、30代からの“国際派”プロフェッショナルのすすめの中で絶賛されてた緒方さん、いったいどんな方なのかと本書を手に取りました。


家柄のすごさもあれですけど、さすがとしか言えないような凄い人なんですね。まったく隙がないというか。まぁ、自伝系も読んでみないといけませんが。


難民支援の現場がどれだけ大変なものであるかなんて、とても文章で伝わるものでもないだろうし、そもそも難民支援という行為そのものが理解を得られにくい経済情勢な感じの昨今、どういうモチベーションでどういうオペレーションにしていくべきかについて熱く語られています。


日本の政治家で彼女を超えられるような人はいるのだろうか。国家じゃなくて人間の安全保障、迷いながらも私は人道主義に賛同です。




メモ:

  • P.126 私は時々、この10年の最大の成功と最大の失敗は何ですかと聞かれます。難しい質問です。私の唯一の答えはこうです。それは、私の脳裏に刻み込また多くのイメージを思い出すことだと。楽しいことも、恐ろしいこともありました。難民が帰還し手を叩いて喜ぶ姿。死んでいく子供たちの姿。そして、助けを求めて泣く年老いた女性の姿。難民たちの顔は、私たちの失敗と成功を明確に映し出す鏡です。


  • P.159 国家が国民の安全を保障するというのが、中略、それでは解決しない問題がたくさん出てきた。中略。あとは全部国内に根ざした紛争で、その場合の犠牲者は完全に国民なんです。しかも、それが部族や人種、民族間の対立になりますと、一般の人々が紛争の当事者でもある訳ですね。中略。国家が安全を守れない中で人間そのものをどうやって保護していけばよいのか。


  • P.169 たとえば全世界の武器の87%は最も豊かな先進8カ国から輸出されています。中略。これだけ見ても、先進国は世界の紛争について大きな責任を負っています。


  • P.171 現在の世界は、経済的にも政治的にもそれから安全保障の面からも相互依存なんですね。自分は関係ありません、という態度では自分の国は守っていけません。相互依存の考え方でなければ、最終的にはテロに対応できないと思います。


  • P.209 手遅れにならないうちに、日本はその内向的・国家主義的傾向、船橋洋一氏が言うところの「不況外交政策」をやめるべきです。現在の経済の停滞が続く限り、このような傾向には陥りがちかもしれませんが、日本の国民は自分たちの経済のみならず、日本の政治的・安全保障上の利害もすべてグローバルなところにその基礎があることを忘れてはならないのです。


  • P.214 難民やその他の恵まれない人々に向けて世界的な連帯を築くべく、共同で人道主義的課題に取り組もうではありませんか。