新世界 国々の興亡 (朝日新書)

新世界 国々の興亡 (朝日新書)

新世界 国々の興亡 (朝日新書)


相変わらず専門領域以外は全く不勉強なもんで船橋洋一さんの名前を聞いてもピンと来なかったんですが、先日、iTunes Uで竹中先生の講義の中でそのお名前が出てまして、目の前にこの本があったので手に取った次第です。


船橋さんとか朝日新聞の方とかが、世界経済と国際政治について洞察力のある戦略知性の方々に対して行ったインタビューがまとめられています。ちなみに全て日本人以外です。


とかく日本人の立場だけでモノを考えがちですが、他の国が同じ問題をどのように見ているか、ってのは情報ソースとして最低限仕入れておかないといけませんよね。日本のテレビとか新聞の内容だって当然操作されているわけですもんね。


自分にはちょっと難しかった。いや、丁寧な注釈のおかげもあって字面を読んでいくことはできるのですが、こういう分野に関心が無さ過ぎたために「へぇ、そうなんだぁ」ぐらいの感想しか持てないところが本当に情けないです。遅すぎるということは無いでしょうからコツコツとやりますけどね。




以下、メモ。



  • 向う見ずな運転をした人を起訴したり、ドライバー教育に力を注いで誰もが上手に運転できるようにすることではなく、人間は過ちを犯す存在と考え、ドライバーにシートベルトを着用させたり、高速道路に制限速度を設けたりしたいのです。人は変わらないと考えつつ、帰結を軽減する手法で、事故率は5分の1以下になりました。P32


    • ローレンス・サマーズさんが、バブルを未然に防ぐ予防についての話で出した例。日本の製造業あたりは習熟してますけど、わたしたちの日常生活でもそういう観点は必要なのではと。本題とは関係ないけど。




  • 才能ある人材は米国に向かいます。なぜなら米国では英語が話され、誰でもなじむことが出来るためです。米国は移民受け入れの国です。中国に赴き暮らすには、中国語を習得する必要があります。また中国の文化に慣れることも必要です。超えるのは相当高い壁です。P117


    • リー・クアンユーさんのコメント。国同士の比較ではそうかもしれないけど、そもそもこれからは国を超えた個人のつながりでやっていくんだから、その議論はあまり意味が無いような気も。まぁ、どこをベースに活動するかは悩ましいんでしょうけど。




  • ボーイングやIBMマイクロソフトが新製品を開発するときには中国でも米国でもなく、まず健康や安全、独占問題などで欧州の規制に合致しているかどうかを確認しているということです。欧州は豊かな経済です。欧州も依然、重要です。ただ、経済的に重要なことと地政学的に重要なこととが分化し、地政学的な中心は太平洋に、経済的な中心は多様になっていくと思います。P180
    • そういうのも多極化っていうのでしょうか?




  • 中国は世界の縮図です。東部では先進国並みの都市を擁した「第一世界」がある一方、西部の遠隔地は「第三世界」のようです。統合された国でありつつ、両社は異なる歴史段階の課題を抱えています。地政学的にも、西部とその国境を越えた地域はいっそう重要になります。P192


  • 「中国の経験」という時、中国の経済の奇跡は、効率的で中央集権化した強大な政府と共産党の指導部なしには生まれなかったということが重要です。その特性も念頭に入れておかなければなりません。P194


  • 対中バランスはひそかで柔らかい外交芸とならざるをえない。中略。「バランスさせているかどうか、定かにはわからないようになるのが得策だ。太極拳のようなソフトな場ランシングとなるだろう」P224


  • 英米の大学で学んだ”グローバル・チャイニーズ”はネットワーク効果を大いに発揮する人材として、世界中から引く手あまたである。米有力企業は、米国の大学・大学院への留学のために、中国の有名大学に奨学金を寄付し、優秀な中国人学生の引きこみと囲い込みを始めている。世界はグローバル人材の頭脳獲得競争に入っている。「19世紀は最大の軍事力を持った国が最強のパワーだった。21世紀は最も世界とつながった国が最強のパワーとなるだろう」現在世界では2億5000万人が生まれた国以外の国で生活している。国が人と企業を求め、人と企業が国を選ぶ。そういう時代に入っていく。世界から最も選ばれる国が、最も避ける国となる。P230


  • 日本の宝を世界の共有財産に。日本の様々な人材や才能、アイデアや思想、アイデアや思想、挑戦や業績、経験や教訓が、世界に英語で十分に表現されていないため、日本は「宝の持ち腐れ」国家となっている。中略。「待ちの姿勢」を決め込んでいては、日本の埋没はさらに進む。「いいものはいつか認められる、いつかは誰かが発見してくれる」という甘えは許されない。そうした「名誉ある孤立」情念は、日本の世界への真の意味での参画を阻害する。P262