ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書)

ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書)

ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書)


本屋が好きで、たぶん壱日でも滞在できます。


最近よく行く本屋さんは半蔵門駅の山下書店。ほんとは併設のカフェでのんびりサボりたいんですが、なかなか難しくって会社の行き帰りにチラッと寄る程度ですね。横浜だと、ダイエーの上のあおい書店とか、みなとみらいのほうのスタバ併設なTSUTAYAとか。まぁでも圧倒的にAmazonですね。


本の選び方って、Internetというかソーシャルな感じになってから本当に変わった気がします。というか、この数年での変化の方向性って電子書籍時代のための布石にしか思えない。


にしては、電子書籍の衝撃が思ったより響いてこない昨今、デバイスの使い勝手というよりは既得権益で雁字搦めな日本の出版業界に問題ありなんだよね、ってのはよく言われる通り。じゃぁアメリカは言うほど進んでるの?っていう疑問に答えてくれる本書。時間軸とプレーヤーの変遷をコンパクトにまとめてくれてるので、読んでおけば何となく訳知り顔できるかもしれません。しないけど。


最初にちっちゃい書店が点在する時代があって、大規模店が幅を利かせ始めたところにamazon登場。みんなそれぞれの想いがあって独自のスタイルを貫いてるわけですが、そこへ電子書籍の登場でまた競争の構図がダイナミックに塗り替えられていく。再販制度とか委託販売とかに守られた日本の書店さんは、向こう岸の話をどう受け止めるんでしょうね。今度きいてみよう、怒られない程度に。


以下メモ。

  • そしてインターネットによる最大の変化は、本を読む人がその経験を共有できるようになったという点だろう。amazonのサイトを覗けば、その本を読んだ人の評価や感想が載っている。中略。キンドルが最新のupdateで加えたのが、アンダーライン共有機能。同じ本を読んだ他の人が、どの部分に下線を引いたかのかが分かる。P37


    • 図書館で「本に線を引いてはいけません」とかよく注意されましたけど、これからはどんどん引くべきですよねw




  • ハードカバーの本1冊(約25ドル)を作って売った場合、その売り上げは以下の用に分配される。

 1.著者とエージェント(いわゆる印税) 約10%
 2.出版社(編集、印刷、製本、マーケティング) 約50%
 3.ディストリビューション(いわゆる取次業) 約10%
 4.リテイラー(いわゆる書店) 約30%
2.の出版社の取り分のうち、印刷代・製本代にかかる費用はそのうちの20%、つまり全体の10%。電子書籍の場合、出版社が直接Eブックを売ったとして、この印刷コストと3.のディストリビューションのコストがかからない分やすく出来たとして、紙の本と比べても、せいぜい2割安ということになる。P092

    • この試算はビックリ。でも環境コストをちゃんとLCA的に考えると、電子書籍化のインパクトはもう少しまともなんじゃなかろうか





  • クラウド式のグーグルか、クローズド・デバイスのアマゾンか、という新たなバトルも予想されているが、実は水面下で両社は話し合いを進めており、キンドルでもグーグル・エディションズの本をダウンロードできるようになるものと思われる。P164


    • 過渡期でもちゃんと稼ぐところが素晴らしい!




  • バーンズ&ノーブルは、店内で無料WiFiを提供し、客が自分のヌックを持ち込めば、自社に在庫がある全ての本が無料で立ち読みできるようにしている。P167


    • 公共図書館も今後は似たようなパターンに持ち込まれていくのだろうか。予約棚あやうし。




  • 本好きの人は、本棚のスペースが空けばまたさらに本を買うし、たとえブックオフなどの古書店に本を売り飛ばしても、またそのお金で本を買い求める。電子書籍や古書店業をさらに次の購買につなげていく発送が、これからの出版社に求められていく。P171


    • それはやっぱりライフログ的な話につなげたい。その時々の読書体験を高度化する方向とは別に、人生を通じた読書活動のトータルサポートみたいのが欲しい。ちゃんとアーカイブして集計管理したり、読書録から読後感のフィーリングを抽出したり。たとえば本を読んでエンパワーされたり、切なさを覚えたり、みたいなもの。それらを人生の文脈に応じて適切なタイミングでフィードバックすることができれば人生もっと楽しく過ごせるようになる気がする。うまく説明できない。




  • 結局のところ、彼らの主張する「守るべき日本の出版文化」などというものは、実のところは自分たちの既得利権にほかならない。長引く出版不況を、版元、取次、印刷会社、書店が痛み分けで耐え忍んできたのに、ここにきて外国勢の電子書籍のせいで自分たちだけが中抜きされるのはイヤだ、というところだろう。守るといいながら、競合同士で談合し、自分たちに都合のいい規格を押しつけるのは著者も読者もないがしろにする行為だ。P177


    • そんなハッキリ言わんでもw。。。でも、その通りなんですかねぇ。




  • センセーショナリズムは、思考をストップさせる危険な論法だ。日本の出版業界は、もう15年にもなろうかという不況の時代にあり、暗く長いトンネルの向こうに「電子書籍」という明るい一条の光が見えたので、余計に期待してしまうのであろう。P190


    • ほんとですよね。取り上げる方も悪いけど、飛び付く愚民もわるいわけで。。。。