2011年07月22日のできごと

そそるマーケティング

そそるマーケティング

そそるマーケティング


経済合理性に基づいた消費行動が当たり前ではなくなっている今日において、消費者を「そそる」ためのツボの探り方とか押し方にはロジックがあるよ的な考察。


内容自体も大変興味深いんですが、書きっぷりというか説明の進め方というか、とにかく腹に落ちやすい流れが読んでて非常に爽やかというか、、、ちょっとした気持ちよさすら感じてしまいました。


「そそられた」状態を生み出せるような「脳内会話」を「なるほど会話」「ギャップ会話」「磁石会話」「書き換え会話」という4つのパターンに分類して、それぞれをうまく活用したプロモーションマーケティングの事例まで織り込んでくれちゃう親切さ。






テクニックとか言うと浅はか過ぎるけど、でも対消費者に限らず普段の対人コミュニケーションの場で意識していると素敵に引き込めそうな気がする。あるいは「この人の話、おもしろいなぁ」と思ったときに、自分がどのパターンで落とされてるか、とか意識したらいいんだな。


実用性とか合理性に頼らずに人を「そそる」能力、これからの営業には必須なんじゃないでしょうか。商材以前に、自分自身がどれだけ「人をそそる」ことができるか、ってのが大事なんだけど今のところ自分は不得手だなぁ。でもまぁ、っみぢかなロールモデルには事欠かないので頑張ります。


来週あたりからコンシューマ向けの新製品プロジェクトを開始する関係上、大変参考になりました。「そそる」仕掛け満載でいこう。




メモ:

  • P.48 「なるほど会話」は「構造化されたストックを持っていることが条件である」。中略。ストックのつながりはニュースの継続的なインプットによってしか維持できません。中略。一回一回の付加はさほど大きい必要はありません。コストのかかるニュースをインプットする必要はないのです。むしろ中断してしまうと、逆に溶解したつながりをもとに戻すために大きな力が必要になってしまいます。「なるほど会話」を成功させる秘訣は「継続」にあると言えます。


  • P.53 ヒトは最後の最後まで微に入り細を穿って調べ尽くし理性的に判断することは意外としていないものです。あるところまでの理解で決められるときは決めてしまう。そこでもあまり差異がなく、どれにするか決められないとしたら、最後は自分の中にあるイメージや理解を確信させてくれ、決断を促してくれる、何か別の情報を求めます。ランキング情報は、その役割を果たしているのです。そういう視点から見るとランキング情報は、あるまとまったイメージや理解を強化する役割を果たしている訳で「なるほど会話」のニュースの1つになり得る、と言えます。


  • P.60 「ギャップ会話」で新しい意味を生み出せた理由。「冬に鰻を食べる」というニュースは、ストックとはギャップがある異質なニュースですから、本来なら奇妙な情報でしかありません。「冬にも鰻を食べよう」と直接的に情報を発信してもそれだけでは、脳内会話は発火しないのです。が、<残り物で><カンタンにつくりたい>という、夕食づくりを担う主婦の「そそるツボ」をしっかり織り込んでニュースにしたことで、奇妙な情報も無視されることなく「鰻雑炊って食べたこと無いけど、鍋の残りで作れるなら、試してもよいかな」「あんかけ風鰻って初めて聞いたけど、簡単に作れるなら、試しても良いかな」といった脳内会話を主婦の脳内に発火させることができ、トライアルにつなげられたと考えられます。


  • P.75 「磁石会話」では、バラバラとした情報やぼんやりとしたイメージしか無いところに、そのストックに関連した情報やイメージをわかりやすいカタチにして、ニュースとしてインプットすることによって、脳内にバラバラと点在していたキーワードやイメージが磁石に吸い寄せられるようにつながってきて、まとまったストックをつくり、意味を明らかにしていきます。


  • P.76 保険や投資ファンド、国債などの金融商品、デジタル系のサービスやシステムなど、立ち止まってアタマを使わなければ理解できない種類の情報は、普通の人はなかなか詳しく読み込もうとはしないでしょう。こういうとき送り手は一生懸命情報を整理し、図式化し、わかりやすく説明することを試みますが、意外と徒労に終わります。ただわかりやすい説明のながれを作っただけでは、ヒトはそそられず、振り返らないためです。


  • P.88 最初に目を奪われたコミュニケーションの入り口から商品やブランドに至までのシナリオに深みがあり、ページをめくるごとに「そういう理由だったのか」「そういう事実があったのか」と納得と発見が繰り返されるほど、ブランドへの興味が高まっていきます。つまり、本当は興味も無く必要も無いと思っていたはずのモノに、どんどんそそられていく、という状態が生まれていくのです。


  • P.118 SEOはよく知られている施策ですが、これも脳内会話の視点から見てみるとヒトをそそる理にかなっていることがわかります。「敏感肌」と入れたときに「ドクターシーラボ」というニュースがインプットされれば、このブランドを何となく聞いたことがある、見たことがある人には「磁石会話」を引き起こし、まったく知らなかった人には新たな情報として「書き換え会話」を起こし、すでに知っていた人にとっては上位にランクされていることが、あらためてブランドの信頼性をはかる材料となり「なるほど会話」を引き起こします。


  • P.132 人の中に潜む「そそるツボ」を探しにいく

1.ヒトの行動をトレースして探してみる
2.自分の五感で体験してみる
3.未来への自分の思いを見直してみる
4.トレンドの奥底にあるインサイトを見てみる
5.コアなファンの行動から、探してみる
6.属性のその先を深く、細かく掘り下げてみる
7.個人的嗜好の世界から探し出す

  • P.142 伝え方に潜む「そそるツボ」に着目してみる

8.カタチにしてみる
9.ヒトの習性を利用する
10.「不確実」が魅力になる
11.環境からのメッセージを利用してみる
12.つながりを作っていく

  • P.136 ソーシャルネットワークの登場により、ツイッターのリツイート、フェイスブックの「いいね」ボタンなど「努力をせずにカンタンにヒトとつながることができる」ことを覚えました。中略。他人への新しい関与の仕方は、ヒトの「他人とつながることに対する意識や行動」をこの先きっと変えていくことでしょう


  • P.163 たとえば売れているタレントさんと売れていないタレントさんでは、パッと見たときに訴求力、興味を惹く力が全然違います。ヒトの感性はこれくらいはっきり答えを出してしまう、というものなのです


  • P.180 私たちは「わかる」ってどういうことなのか、がわかりもせず、「わかりやすい」を繰り返しているのです。そうやって「わかりやすい」を繰り返していくと、「これを載せないよりは載せた方がわかりやすいよね」というふうに、どんどん情報満載になっていって、結果的にわかりにくいものになってしまうのです。わかりやすいを繰り返していっても「わかる」にはたどりつけない、これによってうまくいかなくなるケースが多い。重要なのは、わかりやすさを追い求めるより「興味をもってもらうこと」です。実は、興味を惹く部分を構成しているのは「わからない部分」なのです。「魅力的なわからない」をどう作るかが課題です。みんなどうしても誰も到達できない「わかるもの」を目指してしまうんです。


  • P.184 情報量が多くなってくると受け流していかないとやっていけないわけで、どんどん感覚は鈍化していきますね。けれどヒトは必ず覚醒します。旅に出たとき、空気のきれいなところに行ったとき、田舎でせせらぎの音を聞いたとき、都会では眠っていた感覚が立ち上がることを体験します。ヒトにはそういう高度なセンサーが身に付いていることは事実です。それなのに、そのヒトの能力を前提にしないデザイン、ヒトを信じないデザインが多すぎます。ヒトは感じる力を持っている。気持ちがザワザワする感覚とかそういう様々な感受性を持っている。それを前提に考えれば、デザインの可能性は無限に広がるのです。


  • P.206 何らかの感性刺激によって長期記憶が頭の中から引っ張りだされるということを「自分ゴト化」と言っていたのかな、という気がします。その長期記憶に何を入れておけばいいのかというか、それがぶらんだなんでしょうね。たとえばエルメスのロゴを見ただけで、背景として持っているブランドの情報が呼び起こされて、その結果「欲しい」とか「あこがれる」といった感情や行動が生まれるわけですよね。インプットされた情報が既存コンセプトに関与してなんらかのアウトプットを出す。