「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)
「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)
- 作者: 安田雪
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/10/15
- メディア: 新書
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社会ネットワーク分析とかソーシャルキャピタル系の話って、割と辛い挫折の思い出があって、この10年近く何となく距離をおいてた分野だったりするわけですが、その間にものすごい勢いで発展してたんですね。
使えそうなツールが増えてたり何となく敷居の低さが売りみたいな匂いもするので、ちょっと身の回りのネットワークを改めて分析してみたい。たとえば、RFID業界のプレーヤー間ネットワークとか面白いんじゃなかろうか。世代交代も進んでるような気がするし、少し時系列いれただけで見栄えがしそうだ。
さて、ネットワーク・サイエンスという分野について明瞭な解説が連なる本書ですが、ついつい引き込まれてしまう理由は適切な課題設定のほかに著者の個人的な苦悩やブレークスルーなどが鏤められて何となく感情移入してしまうからかも。(読み終わって最も気になるのは安田雪先生のキャリアだったりするもんね)
人の意志決定により影響力を持つのは、その人に内在する色々なものであるよりも、その人を取り巻く関係性だったりするのではないだろうか。いろんなことを関係力学の観点から考えてみようというのが以前の私なりのネットワークサイエンスだった訳ですが、当時に比べると意外な領域にも展開が進んでいたんですね。
たとえば、対ゲリラ戦略とか新型インフルエンザ対策。ほんとに色んな領域の方々がネットワーク分析的な視座で様々な事象を解析していらっしゃる。
日々コンタクトをとりやすい直接的な知り合い/友人だけでなく、その先にいる人々の顔を想像しながら生きていくと結構おもしろかったり有益な事態に繋がりやすかったり、逆にそのレベルの知り合いを活用したり、そこからの脅威を予防することはこれからのグローバル化とかフラット化された世の中で必須のスキルになるのかもしれない。
メモ:
- ローカルなネットワークを集め、不足している関係を埋めていけば、ホールネットワークがいつかは浮かび上がってくる。そのなかには、局所情報だけでは見えてこなかった関係、意外な結びつきが潜んでいるはずだ。局所ネットワークでは目立たない人物が、全体のネットワークの中では中心的なリーダーであるかもしれない。ローカルなネットワークでは中心的な人物が、全体から見れば単なる使い走りかもしれない。局所情報だけではわからない姿が、全体構造の中で浮かび上がる瞬間がある。ここに、断片的な関係情報を蓄積し、集約し、連結させていく意義がある。P.24
- 人々が一人一人固有に持っている、過去からの人間関係の蓄積。それまでの生涯で出会った他者が与えたすべての影響の結果として、私たちは存在している。それはアイデンティティともパーソナリティとも見なしうる。ネットワークアイデンティティ。P.43
- 人気のある人は常に人に取り囲まれている。人が取り囲む人のところには、ますます人が集まるようになる。人気のない人のところには、いつまでたっても人は集まらない。こんな状態がしばらく続くと、少数の人気者が膨大な友人関係を集め、大多数の人は少しの友人関係しか持てないことになる。P.108
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- これ、企業でも同じでしょ?やはり交流は大事だ。
- クラスタリング係数がネットワークの規模にかかわらずほぼ一定だというのは、いかにも人間らしいローカルルールの働きを感じさせてくれる。ユーザ相互の距離も、さすがにユーザ数2500人程度の頃は、平均も短く3.95ステップであったが、36万人を超えてなお平均が、5.5ステップに収まるというのは驚くべきことだ。P.124
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- 所属組織の規模に関係なく、人が親しくつきあう人間の数はほぼ一定である、という話。日本と中国の違いが面白い。けど、ほんとか?
- 私たちは、かたわらにいる、身近な人の持つ人間関係でさえ、ほとんど知らずに生きている。家族であれ同僚であれ、たまたまバスや電車で隣に座った人であれ、その人があなたと会う直前まで、誰とどのように接触したのか、誰とつながりがあるのかを私たちはほとんど知らないのだ。中略。われわれは人々がおそらくこんなふうにつながっているだろうと認知しているが、その認知にはおそろしい誤差がある。実際に人々がどうつながっているのかということと、人々が「どうつながっていると思っているか」という認識の間には大きな誤差があるのだ。関係のあり方と、関係の認知は別物である。P.181
- せめて知り得るところは事前に知っておいて何らか有効に使うべきだ。
- 人との関わりの強さと恐ろしさの本質は、自分が出す関係ではなく、自分に入ってくる関係に潜んでいる。中略。自分が誰を好きかは、自分には自明だ。わからないのは、誰が自分を好きなのか、である。自分から能動的に誰かに頼り、誰かに助けてもらおうとすることはできる。能動的なアクションは起こしやすく制御しやすい。一方、自分に向けられた好意、自分へさしのべられている善意はなかなか感知できない。中略。他者から自分に向けられている関係を、どこまで認知、制御、活用できるかが人生の豊かさを大いに左右する。中略。その人が外部に向かって張っていく外向きの関係も重要だが、それ以上にその人に向かってくる関係の量と質およびその認知と活用度こそが人や組織の行動とその成果を決定するということだ。P.234
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- 出入りの話は表裏一体なのでいいと思うんですが、ネットワークサイエンスとライフログコンサルティングの関係の橋渡しとして使えそう。