シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)

シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)

シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)




【この本を手に取った理由】
みなとみらいのTSUTAYAの2F中古コーナーの105円エリアを見ていて何となく。
シリコンバレーの人たちが、あそこまでガムシャラになれる理由を精神とか文化で説明できるのであれば、それは勿論ひもといてみたい。


【サマリー】
実際にシリコンバレーに身をおく梅田さんが、1996年秋から2001年夏あたりまでの状況を書簡形式で書き連ねた本書。


2001年に刊行された単行本を2006年に文庫化してるわけで、草創期のシリコンバレーを知るための古典みたいな感じでしょうか。


最終的には、マドル・スルー(=先行きが見えない中、手探りで困難に立ち向かう)の状態自体をプロセスとして楽しむ骨太の行動文化みたいなところに落ちていくのですが、その視点を手がかりにニュースの裏側を読み説いたり、日々の生活における発見が書かれていたりといったあたりが読みどころでしょうか。


当然、Googleふくめ現在の主要プレイヤーの当時の様子とか、マイクロソフトLinuxとネットバブルとその崩壊と、みたいなあたりは連載モノならでは。ちなみに今は無き「フォーサイト」に連載されてました。


シリコンバレーに行かなきゃ、とは思わないけど、対岸の火事で済まされない今日においては、今の自分のやり方とか考え方が如何にダメであるかは非常によく理解できます。いや、そういう意味では必読です。2001年ごろにはそんなこと思わなかったのが残念すぎる。。。


【メモ】

  • P.26 「仮に事業が立ちゆかなくなって、失うものは何だろう」と、創業者たちがふと最悪の場面を想像するとき、それは自分たちが夢を追いかけた膨大な時間とエネルギーだけだと思えるに違いない。ならばやってみよう。


  • P.92 「What is your "EXIT Strategy" ?」中略。起業したベンチャー企業がある程度成功を収めたと仮定したときに「どうやっていったん終わりにするか」について。中略。この考え方は、身を投ずるベンチャー企業の行く末に対して「一生骨を埋めるような形で」コミットしていく人生イメージと違って、さっぱりと明るい気持ちになれる。うまくいかなければ、また別の「Exit Strategy」を持ったベンチャー企業に移ればいい。
    • このあたり、実行に移せない日本人(というか私ですが)が多いのは所属組織への愛着というよりは執着というべきで、一見なにわ節的なストーリーと見せかけて、実は組織への依存とか、もたれかかってるだけなんだろうなぁ。


  • P.136 ネット革命が始まった94年末から97年末までの三年で「何が一番変わったか」といえば、ベンチャー企業の側ではなく、むしろ「ベンチャー企業との戦い」を余儀なくされた大企業の側であったと私は強く思う。マイクロソフト、シスコ・システムズ、インテルといった大企業は、「ベンチャー企業に出来なくて、大企業に出来ることは何か」という問いに真正面から真剣に取り組んできた。その中で最もシンプルで強引なやり方として「ベンチャー企業そのものを次から次へと買収してしまう」というコロンブスの卵のような経営手法が、ある種普遍性を帯びてきた
    • 今となってはあたりまえですが、彼らも元はベンチャー企業なわけですからね。いろんなもどかしさがあったんでしょうね。


  • P.212 日本式に会社の話から入っても、誰も興味を示さない。「おまえは何をやっているのか」「おまえのアイデアは何だ」「おまえの価値は何だ」「おまえは今までに何をしてきて、これから何をするのか」、先を急ぐように、私という「個人」を引っ張り出そうとする。中略。最近わたしのなかに芽生えてきたのは、彼らの「個人としてリスクテイクする生き方」への憧憬とも言うべき感覚です。またその文脈で「変化していく自分」を楽しもうとする気分も生まれつつあります」今年は自分の身の上にどんなことが起きるだろう、来年の今頃は何をしているのだろう。そんなことまでひっくるめてすべてを「前向きに、明るく、真剣に、楽しんでしまおう」という気分は、新しい感覚の萌芽といえます
    • 今週、今月、今期、自分はどれだけ変化できただろうか。あんまりいい加減に生きていては勿体ない。。。


  • P.252 ビジネスプランを作った創業者達に対して、投資を受けたと仮定したときの資金の使い道の詳細、週単位での進捗予測を、微に入り細にわたり聞いていく。これから数ヶ月の間に創業者達が直面するであろう困難や潜在的問題点を一つ一つ具体的に上げ、その対応方法を尋ねていく。時にはわざと「頭に血が上るような」悪意に満ちた質問を浴びせて、その反応を見ることで現実対応能力を判断しようとする。創業者達はこうしたやり取りから学んだことを、徹夜でスプレッドシートに反映させ、翌朝までに新しいビジネスプランを用意する。その新しいビジネスプランに対してまた違う確度から同じ事が繰り返される。こんな厳しい厳しいプロセスが、シリコンバレーデューデリジェンスである。
    • もう少しPlannedなオペレーションを志向しないと。。。そのプロセスを経るだけでも糧となるはずですしね。新しいサービスを作るときにマネタイズを考えることとビジネスプランを考えることは、ちゃんと区別してあげたほうがよいですね。



ーP.277 未来を創造するための「狂気にも近い営み」とは、「目標に到達するための苦難」といったまじめな精神では続けられないほどタフなプロセスである。たとえば「成功すれば大金が入る」というような「ゴールを駆け抜けた瞬間の喜び、そしてその後の実利」を求め「辛く長い日々を耐え忍ぶ」という感覚から程遠い。中略。技術開発であれ事業創造であれ、自分と相性の良いひとつの領域を突き詰めていった先に、対象を「好きで好きで仕方ない」と感じる境地がある。その境地に到達しない限り、「狂気にも近い営み」は長続きしない。「中途半端に何かが好き」というのとは天地ほどにも違う「好きと言うことの凄まじさ」とでも言おうか。心が楽しんでいる状態故に生まれる強さだけが、未来を創造できる。

    • 耳が痛い。もっと徹底してやるために、やらなくていいことをちゃんと整理しなければ。。。