下町ロケット

下町ロケット

下町ロケット


ビジョンと技術力を持ち合わせた大田区の中小企業が外からも内からもふりかかる幾多の困難を乗り越えていくお話。


この困難の描き方が何とも秀逸です。大企業vs中小企業の対立構造もあれですが、企業内個人間の関係がダイナミックに変容していく模様は読み応え充分です。一番の見所は、リスク回避傾向だった若手社員たちが、夢を追いかけるモードに切り替わっていくプロセスでしょうか。まぁ、個人的な感想ですが。


いわゆる企業小説のジャンルとしては、業種業態ごとの事情よりは人物描写というか人間ドラマの部分に重きが置かれている印象。だから、やはり映像化しやすいのでしょうね。WOWOWでの連続ドラマは2011/8/21からスタートだそうです。全5回かぁ、見たいけどガッカリするのが嫌だから見ないかなぁ。そもそもうちでWOWOW視聴できなかったw


さて、当然ながら自分がいる会社と照らし合わせて読み進めてきたわけですが、佃製作所のような所謂日本の中小企業になるまでがどれだけ大変であるかを噛みしめてしまいます。


零細企業というかスタートアップであるところの弊社と佃製作所を比べてもしょうがないとは思いつつ、参考になるところとは結構あります。そんなにサボってるつもりはないけど、自分たちというか少なくとも自分自身は淡々としすぎている。もっと緊張感を持って、たまにはぶつかったりしながらでも進めていかないと、いま自分たちが置かれている恵まれた境遇を活かすことが出来ない。やりたくてもやれない人たちがいるなかで、もっと真剣に、後悔を残さないように頑張らないといけないな、と。妥協しそうになったら、佃品質を思いだそう。


メモ:

  • P.207 手作業だと、機械でやるのと比べて考えるヒントが生まれる。たとえば、途中まで穴を開けたところで、やっぱりここよりもあっちに開けた方がいいんじゃないかとか、組み上げる前に設計のまずいところがわかったりもする。作ってからうまく作動しないことも、手作業の方がかえって少ない。結果的に試作工程の効率を上げることになるわけで。


  • P.209 このバルブのアイデアは、小型エンジンの構造を考えていて偶然思いついたものなんだ。難しい製品だが、だからこそ手掛けることで、会社全体の開発力も技術力も上がっていくと思う。それに、自分の手でエンジンを作り、ロケットを飛ばすのは私の夢だったからね。中略。こうした研究は、今後の生産活動に必ず生きてくるはずだ。
    • リスクの所在を確認するのは当然だけど、後ろ向きな「やらない/やりたくない理由」だけを主張されると辛いものですよね。できるできないで判断せず、やるべきことをやっていきたいものです。(きれい事)


  • P.283 母「あなたが、最初家業を継がないっていったとき、父さん、がっかりしてたけどねえ。でも、大学での研究があったからこそ、いまの佃製作所がある。そう考えると、やっぱりあなたのほうが正しかったのかも知れない。」佃「なにが正しいかは、後になってみないとわからなさ。肝心なことは、後悔しないことだな。そのためには、全力を尽くすしかない