若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)


今回も息子へ綴る形式で頑張ってみようかと。


ここから。
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こんばんは、これを書いているのは、2011/4/14の23時頃です。


あなたは1歳と10ヶ月を過ぎて、いよいよ活発です。が、保育園新学期というか新学年の疲れか咳と鼻水が止まらず発熱寸前の状況。それでも元気に遊んでいるあなたを頼もしく思います。あ、明日の朝にはお花茶屋から公公と婆婆が来てくれるみたいですよ。


さて、これから紹介するのは数学者兼エッセイストとでもいうのでしょうか、藤原正彦さんという方がアメリカへの留学を通じて学んだことを日記形式で綴った「若き数学者のアメリカ」という本です。


先日紹介した、小澤征爾さんの「ボクの音楽武者修行」に比べると随分と真面目に書かれたものです。もちろん小沢さんがふざけて書いたわけではないのでしょうが、音楽家と数学者、わたしはどちらも芸術家の範疇だと思うのですが、モノの見方/考え方に随分とGAPがあるものだな、と楽しく読みました。


堅めの文体で本気か冗談か分からないことを書く、私としても好みのアプローチではあるのですが、数学者らしくきっちり推敲された文章で、街中を裸で走り回った話とか、勝算もなくナンパしまくって、もちろん全敗だったりとか、ところでこの人はアメリカに何をしに来たんだっけ、というようなシーンがちりばめられています。


もちろん、真っ当な考察も盛りだくさんで、とくにアメリカ人およびアメリカに対する考察およびその推移は興味深いです。


数学者の話は出てくるけど、数学的な内容は一切はいってないので、その点は安心してください。苦手でしょ?w


この本が書かれた当時とはアメリカの様相もだいぶ変わってはいるんでしょうけど、それと関係なく、単一民族のみによって運営される日本社会というのは、そろそろ限界だと思います。はやいうちから留学するなりして、多民族社会での呼吸法を身をもって経験してください。


大陸生まれの母を持つあなたですから、きっと順応できるはず。楽しんで!


あと、ところどころ私小説テイストというか、カジノで大損するプロセスにおける心理描写のあたりは西村賢太さんの「苦役列車」を思い出して何だか息苦しくなった。


序盤、なんとなくつまらない風なのだけど、嫌になったら先に5章「フロリダ−新生」だけでも読んでみてください。ここを読んで旅に出たくなったら、それだけでこの本を読む価値はあったということだと思います。


もう書くことないので、この辺で。
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ここまで。


メモ:

  • P.209 また、子供は正直なところが良い。正直だから、ひっきりなしに嘘をつく。虚栄心も強い。嘘をつかないのは不正直だし、虚栄心を見せない人間は信用できない。
    • あえてそういう書き方をすることで、自身の正当性を主張しているのだろうか。何カ所かあるんだけど、無駄に回りくどい書き方するなぁ。


  • P.299 毎日、かさばった衣服にくるまった人々が身をこごめて歩くところを、一糸まとわず堂々と走り回るというのはすこぶる気分がよい。開放感だけではなく優越感さえ感ずる。中略。こんな素晴らしい、爽やかなことがこの世にあったのか、などと思いながら、中略。
    • さわやかな書きっぷりですが、この方、裸で街中を走り回ってるだけですw「国家の品格」とか読んだこと無いけど、著者のこういうバックグラウンドというか変遷を踏まえると、どう読めるんだろうか。


  • P.314 彼らはさまよいながらも絶対に弱音を吐こうとしない。「寂しさに宿を立ち出でてながむれば、いずこも同じ秋の夕暮れ」のごとき感情を表面に出すのは恥とさえ思っている。しかし心の奥では、日本人と同じように、この歌に深い共感をおぼえるのである。それを滅多なことでは外に出さないだけだ。