デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)

デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)

デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)


かみしめたい部分が多すぎて、随分ゆっくりと読んでしまいました。


正直、IDEOのことはほとんど知らないし、トム・ケリーさんの著作も買ってはあるけど読めてないんですけど、さすがに面白い。


自分の場合、IT業界崩れで「ソリューション」みたいな言葉に踊らされたり踊らせたりするような感じなんですが、ソリューションオリエンテッドな立ち位置と「デザイン思考」の違いを、すこし立ち止まって考えてみた方がいいですよね。


バランスをとる、っていう表現がものすごくしっくり来ましたが、耳の痛い話も多くて少しでも自分のものに出来るように今から頑張ろう、楽しもう。


プロトタイプの話に限らず、デザイン思考のためのツールとか手の動かし方についても書かれてるし、なんだかお買い得ですね。


それにしてもハヤカワ新書シリーズの当たりっぷりは、so-netのCMが佐々木希から篠田麻理子へ繋いでるのと同じぐらい盤石だと言わざるをえないのではw




メモ。

  • 失敗は成功への早道。何の成果にもつながらないと知りながら、無理に次の必然的なステップに進むことの切なさ。P27


  • 相反する様々な制約を喜んで受け入れることこそ、デザイン思考の基本といえる。条件は3つ。技術的実現性(現在またはそう遠くない将来、技術的に実現できるかどうか)、経済的実現性(持続可能なビジネス・モデルの一部になるかどうか)、有用性(人々にとって合理的で役立つかどうか)。P28


  • したがって、今のところもっとも大きな機会が潜んでいるのは「企業が新製品を作って消費者が受動的に消費する」という20世紀の考え方と「消費者自身が必要なものすべてをデザインする」という未来的なビジョンの中間の領域。P79


  • デザイン思考は、山から山に優雅にジャンプするようなものではなく、私たちの気質やコラボレーション能力を試すものだ。しかし、忍耐には驚くほどの成果で応えてくれるのだ。P87


  • IDEOの場合は、ブレインストーミング・セッションの専用室を設け、ルールを文字通り壁に書いてある。「判断を焦らない」「野蛮なアイデアは歓迎」「話題からは逸れない」「他社のアイデアをもとにする」など。P103
    • 壁にかいてある、ってのが素晴らしい!


  • IDEOの最初で最高のプロトタイプは(中略)、バン・ロールオン・デオドラントのチューブに付いていたローラー・ボールをプラスティックのバター皿の底に取り付けた。それからほどなくして、アップルコンピュータは最初のマウスを出荷した。P120


  • ボセラ社はあるビデオ・シナリオを制作した。従業員がボイス・コントロール式の「コミュニケーション・バッジ」を装着して、社内ネットワークのあらゆる場所にいる同僚たちと連絡を取り合う様子が書かれている。架空のITサポートチームのやり取りを追ったこのショートムービーは、潜在的な投資家にコンセプトを説明する上で、技術概要書やパワーポイント・スライドよりもはるかに効果的だった。P124
    • いま使っている標準のソリューションカタログにムービーを入れる!


  • 大半の乗客にとって、旅は「駅に向かう」「駐車場を探す」「切符を買う」「ホームを探す」といった10のステップで成り立っていた。もっとも特筆すべき洞察は、乗客は8番目のステップになってやっと列車の座席に着席するということだった。言い換えれば、列車の旅の経験の大半は、列車と全く関わりがなかったのだ。P125


  • 産業革命は世界に想像を超える富をもたらしたと同時に、世界から感性、情熱、人間の深い関わりを奪い取ってしまった。P.148


  • 成長方法マトリクス。イノベーション活動を、既存の商品か新規の商品かをあらわす縦軸と、対象が既存の消費者か新規の消費者かをあらわす横軸に沿ってマッピングすることで、イノベーション活動の全体的なバランスを効果的につかむことができるのだ。P205


  • われわれは、経済の中心が製品の大量生産からサービスや経験へと進化して行く中で、まさに力のバランスの画期的な変化に直面している。企業は、権力を明けわたし、顧客を「エンドユーザ」ではなく、双方向プロセスの参加者とみなしはじめている。姿を現しつつあるのは、ほかでもない、新たな社会契約なのだ。


  • 制約が厳しく失敗の対価が高い、もっとも極端な利用者と協力関係を結ぶのは、単に社会的に意義があるからではない。世界的な影響力を発揮する機会を探し出すとともに、慎重な組織が手を出せずにいる環境で成功を遂げる、新たな競合相手の餌食にならないようにするためなのだ。P268


  • まずは、人生をプロトタイプと考えてみよう。そうすれば、実験を行い、発見をし、視点を変えることが出来る。P303