モンサンミッシェル。

週末ニセコにて、妊婦を温泉漬けにして自分だけスキーしまくってたわけですが、神様はしっかり見てたみたいで、天罰とばかりの風邪にすっかりダウンしております。


体が弱ってくると、いつもより少しだけ過去を振り返る時間が長くなるような気がします。おおよそ気のせい程度の比重変化ですが、なんとなく昔の写真に見入ったり、なんの写真だったか思い出せなかったり。まぁ、そんな感じです。


そんなこんなで、いつもは「今日」の事とか「これから」のことを書く事が多い訳ですが、たまには少し前の事を振り返ってみたりしたいな、と。もう折り返しは過ぎた感じするしね。


で、今日の写真は「モンサンミッシェル」。

昨年(2008)の9月にヨーロッパサイコロツアーで辿り着いたわけですが、世界遺産とか興味の無い私でも唯一、訪れてみたかった場所でした。もちろん根拠レス。子供のころに「凄い」というイメージが刷り込まれているだけで、何か合理的な理由なんてあるはずもなく、ただ何となく憧れでした。


で、紆余曲折あって何とか現地にたどり着いた訳ですが、まぁ予想通りの期待はずれな訳です。付き合わされた方々には申し訳ないけど、まぁプロの写真で見る方が実物より迫力ありますわな。


そんな感想を持ってしまう理由を、その後も色々と考えてた訳ですが、最近になってようやく自分でもわかってきました。要するに、プロセス偏重だったわけです。


行くまでの道のりが楽しすぎて、ゴールそのものには興味がなくなってしまう。手段の目的化?なんていうとネガティブトーンですけど、もちろん良い意味でプロセスが楽しすぎた訳です。


だってさ、そもそもサイコロの旅だからモンサンミッシェルに行けるかどうかなんて分からなかったわけで、その目が出ただけでゴールみたいなもんだし、そんなシチュエーションで綿密にその時を迎える準備なんて出来る訳もないんだよね。


夜行でミラノを出て早朝のパリについて、疲れきっても食べ物はサンドイッチしか無いし、しかもパンは固いし、モンサンミッシェルに行けそうなTGVは既に満席だとかバスに間に合わないだとかで諦めろみたいなことを言われるし、そんなこんなで早くも挫折かと思いきや別の窓口にいってみると天使のようなフランス人のお姉さん(alexandraちゃん?だった?)が異様な熱心さでレンタカーの手配をしてくれたりして、最終的には行かざるを得ない状況に成ってしまう。


一件落着?


で、TGVで目的地の割と近くまで行けたものの、そこからレンタカーなんだけど、慣れないマニュアル車で運転が覚束ないヒロシさん(笑


相変わらず食い物はサンドイッチしかないしさ。まともな地図も無いままに、3人集まっても文殊とは行かず、バカな方、バカな方ばかり向かってしまうのは、30過ぎても変わらないというか、以前よりスケールアップしてるような気もすんだけど。


なんとか目的地に辿り着こう、そしてまたサイコロふって、もっとたくさん回らなきゃ、ってそもそもそのモチベーションが一般には理解されにくいんだろうけど、とにかく盲目にゴールを目指してグダグダ言いながらも皆で頑張ってるわけ。


でも、ふと我にかえる瞬間がある。


「そういえば、先週、会社をやめたっけ」
「そういえば、日本に帰ったら翌日から新しい職場だ」
「こんな非力な会社、自分で何とかできるかな」
「まぁ、やれることをやるだけだからな、どうでもいいや」


「。。。」


「あれ、そういえば自分は今、何してるんだっけ?」
「あれ、車に乗ってる。だけどイプサムでもタクシーでもない」
「あれ、助手席にのってるけど、ヒロシさんが左側にいる」
「あれ、外車? でもヒュンダイって外車?」
「あれ、Mickいるじゃん?」


「。。。」


「あぁ、そうか。いまヨーロッパサイコロ修行中だった」

「それにしても、どこで何してようと、話す内容は変わらんなぁ(笑)」

「これじゃ、ヨーロッパまわりながらだろうと、うちで飲みながらだろうと、
 どっちでも変わんないじゃん(笑)」


「。。。」


「だいたいさぁ、異国の地でエンストしまくりながら交差点へ突入して行くなんてのは神風以外の何者でもないし、その上、「この車、バックできない」とか言われたら、片道分の燃料しか積まない飛行機みたいでホントにカミカゼに成って来ちゃうんだけど」


「。。。」


「あ、モンサンミッシェル見えた!」
「マジで? あ、ほんとだ! いやぁ、無事に辿り着けたー」


「やっぱこういうのは遠くから見るのがいいんだよね。じゃぁ、もう帰ろうか」
「いやいや、せっかくだから近くまで行きましょうよ」
「えぇ、遠いよぉ、まだ10km以上あるよー」
「は? ミラノからここまで何キロあると思ってんだよ」
みたいな遣り取りがあったか定かではありませんが、やっぱりプロセスのほうが印象に残っちゃうんですよね。ちなみに、ちゃんと近くまで行きましたよ。30分ぐらいしかいませんでしたけどね。


で、バックできない車を手押しで駐車場から救い出し、次の目的地=スペインのマラガへ向けて旅立つのでした。


憧れのモンサンミッシェルだったはずなのに、そのものについては思い出が残ってない。それもまた、思い出か。